世界の食用花・ヨーロッパ編【エディブルフラワー】

食用花

ヨーロッパの国々では古くから花が愛でられてきました。
単に飾りつけだけでなく薬用や香料、化粧品にも欠かせません。
ヴィクトリア朝のイギリスでは「花言葉」が次々と作られ、贈る相手に気持ちを表現しました。
またインテリアやファッションなどに花柄が使われる場面も多くあります。

この記事では、ヨーロッパの人々が好んだ食用花をまとめています。

エルダーフラワー(西洋ニワトコ)

  • 原産地:ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア
  • 開花期:5~6月
  • 調理法:シロップ、お茶

マスカットのような甘い芳香があります。
ニワトコの木はヨーロッパでは魔女と深く関わりがあると信じられています。
惚れ薬の材料に利用され、現代でも「ラブ・ポーション」という名でカフェやレストランのドリンクに使われています。
ヨーロッパの広い地域で花からシロップが作られ、ルーマニアではソフトドリンク「ソカタ」のベースになっています。また、フランスのリキュール「サンジェルマン」やアルザス地方のブランデー「オードヴィー」、スウェーデンのアクアヴィット「ハランズ・フレーデル」もエルダーフラワーが使われています。

エルダーフラワーの採取時期は非常に限られています。
完全に開花し、昆虫が受粉する前のものでなければいけません。
受粉後の花には芳香や味が無くなってしまいます。

 

カウスリップ(キバナノクリンザクラ)

  • 原産地:ヨーロッパ、北西アフリカ、南西アジア
  • 開花期:4~5月
  • 調理法:サラダ、香りづけ

別名キバナノクリンザクラは黄花九輪桜と書きます。
春に元気な黄色の花を咲かせるカウスリップ。
スペインではサラダの彩りになり、イングランドではワインや酢の香りづけに利用されています。

 

スミレ

  • 原産地:ヨーロッパ、北アフリカ
  • 開花期:3~6月
  • 調理法:お茶、お菓子、香りづけ

スミレにはビタミンAやCが豊富に含まれています。
またアスピリンの成分を含み、パキスタンではスミレの花を薬用茶として解熱に利用しています。
砂糖漬けとして利用されることも多く、古い時代からイングランド王も好んで食べ、ヴィクトリア朝時代にはお茶会のお菓子として盛んに用いられました。

スミレはアメリカにも渡り、一時期ニューヨークで栽培されるようになりました。
そして角型のキャンディー「ヴァイオレット」が誕生し、今日でも親しまれています。

 

ソレル(ヒメスイバ)

  • 原産地:ヨーロッパ、西アジア
  • 開花期:夏
  • 調理法:サラダ、スープ、マリネ、菓子、お茶など

スイバの仲間で大きな葉をもちます。
花は目立たず地味ですが酸味があり、古代エジプトでは食用とされてきました。
シュウ酸を含むので多食しないよう注意が必要です。

 

チャイブ(セイヨウアサツキ)

  • 原産地:ヨーロッパ、西アジア
  • 開花期:5~7月
  • 調理法:スープ、サラダ、卵料理、パンなど

細長い花茎の先端に球状に小さな花を咲かせるチャイブ。
ネギ属でありネギと同じような芳香があります。
チャイブには血圧降下やコレステロールを下げるなど様々な薬効があり、かつてフランク王国ではカール大帝によりチャイブを庭に植えることを推奨されました。
似たもので日本にも自生しているアサツキはチャイブの変種。

 

ニオイゼラニウム

  • 原産地:南アフリカ
  • 開花期:春~初夏
  • 調理法:お茶、ゼリー、ケーキなど

イギリス人によって母国に持ち込まれたハーブ。
ゼラニウムの仲間で香りのあるものの総称をニオイゼラニウムと呼びます。
特に葉に芳香をもち、ミントやレモン、バラなどの香りが楽しめます。

 

バラ

  • 原産地:チベット周辺、中国の雲南省~ミャンマー
  • 開花期:春~秋
  • 調理法:香りづけ、砂糖漬け、ジャム、ローズウォーター、花酒、菓子ほか

バラの食用利用の最古の記録は紀元前7世紀のメソポタミア。
また古代ペルシアではバラが栽培されバラ酒が作られていました。
ヴィクトリア朝時代にはバラはさまざまなお菓子や風味づけに盛んに利用されました。
扱いの楽なバニラが入ってきたことで衰退した時期もありますが、現在では再び一流の菓子職人の手によって焼き菓子の風味づけを担っています。

 

マツヨイグサ(月見草)

  • 原産地:南北アメリカ
  • 開花期:6~9月
  • 調理法:ポタージュ、サラダ、砂糖漬け、酢の物、天ぷら

日本国内では帰化植物になっているマツヨイグサ。
黄色い花は夕方から朝にかけて咲くのが特徴。
ヨーロッパでは15世紀にはイースターを祝うご馳走として甘いポタージュにされたそうです。
またマツヨイグサの砂糖漬けはカスタード菓子にも使われます。
詳細は過去記事のこちら

 

ラベンダー

  • 原産地:地中海沿岸
  • 開花期:5~7月
  • 調理法:サラダ、お茶、ジャム、砂糖漬け、調味料

元々は古代から浴湯料や化粧品、マッサージオイルなどとして使われてきました。
ラベンダーには多くの種類がありますが、料理によく使われるのはイングリッシュラベンダー。
かつてイングランドの女王エリザベス1世も頭痛や不眠症解消のためにラベンダーティーを飲んでいたと言われます。
またジャムや砂糖漬けにもされました。

フランスでは「エルブ・ド・プロヴァンス」というスパイスミックスにも加えられています。

 

ムラサキツメクサ

  • 原産地:ヨーロッパ、西アジア、北西アフリカ
  • 開花期:5~10月
  • 調理法:花酒、お茶、ワイン、ゼリーなど

アイルランドの守護聖人、聖パトリックのシンボルでもあるクローバー。
レッドクローバーとも呼ばれています。
昔からハーブとして、ワインやゼリー、お茶などに利用されます。
日本にはシロツメクサとともに明治以降に牧草として移入されました。

 

参考にさせていただいた本

この記事を作成するにあたり、以下の本を参考にさせていただきました。
写真は多くありませんが、詳しい情報やレシピも掲載されていますので、ぜひご覧ください。

 

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