世界にはさまざまな食文化があり、食材もさまざま。
食用花については日本ではまだあまり注目されませんが、多くの国々では古くから食卓に彩りと豊かな味わいをもたらしてきました。
今回は、地中海や中東で食べられている花をまとめてみました。
アーティチョーク(チョウセンアザミ)
- 原産地:地中海
- 開花期:6~9月
- 調理法:生食、茹でる、蒸し物、炒め物、揚げ物、マリネ、ハーブティー、花酒など
開花すると青紫色の花を咲かせる巨大なアザミの仲間。
アーティチョークは開花前のつぼみが食材になります。
紀元前300年頃から栽培の記録があり、現在手に入るアーティチョークは約50種もの中から食用になるシチリア島やチュニジアの野生種から栽培されています。
アーティチョークは古代ギリシアやローマの人々に珍重されました。
しかしローマ帝国滅亡とともに栽培文化は失われ、わずかに修道院で栽培され続けていたようです。
その後中世になると再び人気を取り戻しました。
今ではイタリアやスペイン、フランスなどの地中海地域で盛んに栽培されており、アメリカでは19世紀にシチリアからの移民によりカリフォルニアでアーティチョークの栽培が始まりました。
アンチューサ(ウシノシタグサ)
- 原産地:南アフリカ
- 開花期:4~6月
- 調理法:サラダ、魚料理、スープ、デザート、砂糖漬けなど
かわいらしい青い花をつけるアンチューサ。
同じく食用花になるボリジ(ルリジサ)の仲間でもあります。
チュニジアではアンチューサをソレル(ヒメスイバ)とともにスープにするそうです。
オクラ
- 原産地:アフリカ北東部
- 開花期:7~9月
- 調理法:サラダ、シチューなど
薄黄色の花びらをもつオクラ。
一日花のため、料理に使う時は開花を見逃さないようにします。
エジプトでは古くからオクラを栽培し、実も花も食用にしていました。
現代でもこれらをシチューに入れて食べられています。
オレンジ
- 原産地:中国南部~インド北東部
- 開花期: 5~6月
- 調理法:香料、肉料理、焼き菓子、飲料など
アラブ世界ではオレンジの花からオレンジフラワーウォーターやエッセンシャルオイル(ネロリ油)を作り香水や料理に利用しています。
イスラム教の拡大とともにペルシア=イスラム料理も北アフリカからヨーロッパへ広がり、オレンジの花のレシピも伝わりました。
オレンジの花はギリシャ神話やローマ神話にも登場し、昔から多産や幸運のシンボルとされていたため、オレンジフラワーウォーターは地中海の料理にも盛んに使われています。
エッセンシャルオイルは1リットル作るのにオレンジの花1トンが必要になるため価格は高め。
コカ・コーラの初期のレシピにはこのオイルが使われていたそうです。
カラシナ
- 原産地:西アジア
- 開花期:3~5月
- 調理法:サラダなど
古くからヨーロッパでは可食として知られていたカラシナ。
古代ローマではカラシナは媚薬の効果があると信じられ、乾燥させた花を粉末にして惚れ薬が作られていました。
カラシナの種子からはマスタードが作られます。
また葉や茎も食用になります。
詳細は過去記事のこちら。
ケイパー(ケッパー)
- 原産地:地中海沿岸~イラン高原、アフガニスタン
- 開花期:3~8月
- 調理法:塩漬け、酢漬け、ソース、ピザ、魚料理、肉料理、サラダなど
乾燥や暑さに強く、痩せた土地でも良く育つケイパー。
栽培されることは少なく、ほとんどは野生のものを利用されるそう。
モロッコやスペイン、トルコで多く生産されています。
ケイパーは開花前のつぼみの状態で収穫されます。
辛味や独特の香りがあるため、地中海料理では重要な役割を果たしています。
サフラン
- 原産地:地中海東部沿岸、インド、小アジアなど諸説あり
- 開花期:10~11月
- 調理法:米料理、鍋料理、菓子などのスパイス、お茶など
花の赤い柱頭を乾燥させたものが食用にされます。
この柱頭は一輪に三本しか収穫できず、手作業で摘み取るため多大な労力とコストがかかります。
現在、主にサフランを栽培しているのはイランで、その他スペイン、エジプト、ギリシャ、インド、モロッコでも生産されます。
地中海料理では欠かせない食材で、スペインではパエリアに、フランスではブイヤベースに、イタリアではリゾットに使われています。
12世紀に黒死病(ペスト)が流行った時、サフランに効果があると噂が広がりました。
確かにサフランには薬効はありますが、しかしその効能は血行改善や抗酸化作用、うつ病の改善などであり黒死病の治療や予防の働きはありません。
サフランは料理のスパイスとして利用するには問題ありませんが、多量に摂取すると健康を害する恐れがあると言われています。
特に妊娠中の方は控えた方が安心。
ヒソップ(アニス)
- 原産地:地中海東部、西アジア
- 開花期:6~9月
- 調理法:ソース、香りづけ、炒め物など
アロマでも使われるヒソップはシソ科で爽やかな香りが特徴。
青紫の小さな花は聖書の時代から食用とされてきました。
羊料理のソースに加えられたり、クッキーなど焼き菓子の香りづけに使われます。
中国でも牛肉の炒め物に利用されます。
ベルフラワー(オトメギキョウ)
- 原産地:東ヨーロッパ
- 開花期:3~6月
- 調理法:サラダ、コンフィ、ジェリー、砂糖漬けなど
フウリンソウやツリガネソウとも呼ばれるキキョウ科の花。
花色は紫だけでなく白やピンク、青、まだら模様まで多彩。
サラダの彩りにすれば華やかに、砂糖漬けにすればデザートの飾りになります。
参考にさせていただいた本
この記事を作成するにあたり、以下の本を参考にさせていただきました。
写真は多くありませんが、詳しい情報やレシピも掲載されていますので、ぜひご覧ください。